第7回ホワイトハート大賞受賞作。
高校生、藤宮薫流は代々男子の生まれないとされる家系に、なぜか生まれた男性。父親は行方不明。彼は白昼夢で眞魚御前と呼ばれる姫神と会い、自分の存在を否定するような謎をかけられる。彼の生きている世界が夢であるかのようにさえ言われるのである。親友の鏡彦にちょっかいをかける婚約者の郁子、気のふれた母親との会話、年上の女性への思慕などを通じ、思い悩む薫流。自分は何者なのか、何を求めているのか。
現実と幻想がカットバックのように描かれ、次第に混沌としていく構成がうまい。全てが解明されたとき、その構成が読み始めたときに抱いた印象よりもずっとがっしりとしたものであることがわかった。
耽美小説は、私は苦手であるし、本書も私にとっては決して読みやすいものではなかったけれども、作者の実力は十分に受け止めることができた。将来、うまく育てば赤江瀑タイプの作家になっていくのではないだろうか。
(2000年4月23日読了)