読書感想文


創星の樹 1 ダーク・ドリーム・プリンセス
栗府二郎著
メディアワークス電撃文庫
2000年4月25日第1刷
定価590円

 新シリーズの開幕。いったん文明が滅亡したと思われる世界が舞台。生き残った機械が暗黒の存在と戦う中で〈亜人〉を生みだし、次いで〈人間〉も生まれた。
 主人公、リュードは、機械が自己再生していた場の〈棄械工原〉で古い機械を掘り出そうとしていたが、そこで〈機械獣〉に襲われ〈機械の墓守〉に助けられる。〈亜人〉の予言者〈夢姫〉になる儀式を行っていた少女セイリンを〈機械獣〉から救ったリュードは、彼女とともに逃げ込んだ洞窟で古代の機械と出会い、〈樹的記憶再生者〉に選ばれる。かくしてリュードは世界を破滅から救う旅に出ることになる。
 焦点はリュードの成長物語にあるのだが、入り組んだ舞台背景を描くところから物語が始まっているので、そこらあたり少々こみいっていてすんなりと物語世界に入りにくい。構成としてはリュードの動きを先に描いていった方が、読者を作品世界に引きずり込みやすいのではないだろうか。
 しかし、そのこみ入った舞台背景をきめ細かに描いているために物語に奥行きが出ているのも確かである。遠未来の冒険SFとして今後の展開がおおいに楽しみなシリーズが始まった。これからどのような試練が主人公を待ち受けているのか、期待しながら続刊を待つことにしたい。

(2000年4月25日読了)


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