「竜を殺せ」という呪詛の言葉を教わった女子高校生が、合宿で眠っている同級生の耳にその言葉をささやきかけた。同級生たちのまわりで竜の入れ墨をした男が次々と襲われる。呪詛が本当に意味する「竜」とは何か。認知心理学の方法論で精神感応について解明しようとする大学講師、火鳥竜介と、神仏オタクを自認する腹違いの妹、麻生まな美は竜の一族の末裔である天目マサトと関わり、竜神伝説の真相に迫り始める。
ほとんどが神話や伝説、徳川幕府が江戸の守りとした寺についての説明で占められている。その説明、解釈は非常に興味深いものであるのだが、小説の構成として考えたとき、あまりにも冗長すぎる。主人公の一人が呪詛にかけられていたりするのだが、そのまま呪詛を実行した方が物語としては面白いと思うのだが、作者は主人公を傷つけたくないのか、あっさりと危機を回避している。
作者は覆面作家で、本来はノンフィクションライターだそうだ。小説を書くのは初めてだということだが、全体の構成が小説としては弱すぎる。着想は面白いのだが、ストーリーに結びつけることが十分できていないように思う。正直なところ、読み進めるのがしんどい部分が多かった。そういう意味では実にもったいない。
この続きがどのように展開されるかについては興味があるが、もう少しストーリー性の強いものであってほしいのである。
(2000年5月4日読了)