高校生が次々と射殺される事件が起きた。主人公の高校生、緋村恭介は弾を撃ち込まれて瀕死の状態の少女、秋篠香澄を助けようとして自分も体中に銃弾を受ける。ところが、病院で目覚めた彼は体に傷一つついていないことを知り驚く。彼の通う高校に転校してきた香澄。彼女は新種のウイルスに感染し、普通の人類を超えた能力を持っていると告白する。そしてまた、恭介も、そして連続射殺事件の犯人も、同じウイルスに感染し、レベリオンと呼ばれる新人類に変化しているのだ。香澄と恭介は犯人を追い求めて行動し始める。
ウイルスが生物の進化を促進したという仮説をアイデアの核にした正統派の学園アクションSF。超能力者の孤独や進化した新人類の傲慢さなど、過去にも多く描かれてきたテーマを、テンポのよい展開でリフレッシュさせたという印象がある。十代の少年たちがもつ孤独感や劣等感を細やかに描いている。
読んでいて感じたのは、作者がかなり自信をつけてきているなということ。エンターテインメントのポイントをつかんだといっていいだろう。だから、昔からあるテーマであっても、読み手を引きつける力を小説に与えることができているのだ。本来なら説教臭くなりがちな部分も、ストーリー展開の中で自然に消化されているので、決して鼻につかない。
一点、ひっかかったのは主人公が通っている学校の名前が「高城学園」と私立の学校と思われるものなのに、県教委からAETが派遣されているという記述。むろんストーリー展開からいえばどうということではないのだが、この設定なら「高城高校」と公立らしい名前でもよかったのでは。作者は第1回日本SF新人賞受賞作家であり、将来を嘱望されている身である。どんな些細な点でもおかしな表記がないかきっちりと確認していってほしいのだ。
(2000年5月19日読了)