新書ノベルス二段組にして750ページという大著。
平安末期が舞台。鳥羽法皇と彼を支配する〈百済の三魔人〉が、彼らの永続する支配を保つために源義朝と平清盛の勢力争いを利用し、やがてそれが保元の乱につながっていくという権力闘争の物語と、熊野山中の新羅人の子孫の村に生まれた運命の子、雄呂血が〈百済の三魔人〉から天下を握る鍵となる〈天の日槍〉と〈竜眼石〉を取り戻そうとする物語が軸となり、からみあう。多数の登場人物が入り乱れ、乱世絵巻を形作る。
壮大な枠組みの物語であるが、なにか全体に散漫な印象が残った。主人公たるべき雄呂血は中盤の約3分の1にしか登場せず途中で死んでしまう。様々なエピソードは、確かに全てどこかがからみあい関連しているのに、残念ながらそれを貫く一本の幹にまとまるようには描かれていないのだ。一度した説明が何度も繰り返してなされるのも冗長に感じられる。
主要な登場人物は作者の他の作品にも登場する。つまり「富樫史観」とでもいうべき作者独自の闇史が背景ではなく主役となっているということなのだ。
本書だけに話を絞ってみても、壮大な物語にしようとしていろいろな仕掛けをしているのだが、結末に至って出された謎の解答は、作者の意図に反してその仕掛けの割にはスケールが小さくなってしまっているといわざるを得ない。最初の伝奇的設定のところで若干のボタンの掛け違いがあるというと厳しすぎるだろうか。
(2000年5月20日読了)