警察が無力となり、自衛のために人々が「ケンカ屋」を雇うようになった時代、銃を持ったものより強い「ケンカ屋」は「ガン・オーバー」と呼ばれていた。主人公の中学生、鳴神光は一見普通の女の子だが、底知れぬパワーと格闘技術を持っていた。しかし、彼女はその使い道についてどのようにしていいのかわかっていない。そんなある日、彼女に憧れる同級生の衆智文殊に誘われて、「ガン・オーバー」同士の試合を見に行った彼女は、そこに自分の生きる道を見出すのだった。
近未来アクションのスタイルをとった格闘技小説。目標を探している少女が自分の能力を生かす道を見つけるという、いわば少年小説の王道といえる設定である。作者のこれまでの作品よりも格闘シーンの描写が細かくなり、本格的な各闘技を楽しめる。
前作同様「さわやかな梶原一騎」「品のある本宮ひろ志」といった路線であり、作者の作風はここに確立されたといっていいのではないだろうか。次巻以降で主人公の格闘家修業が本格的に始まるわけだが、この路線を押し進めていけばヤングアダルト小説の作家として独自のポジションを占めていくことができるだろう。
(2000年5月28日読了)