読書感想文


歌え〈ドミニオン〉我がために
ジャッジメント・ワールド

青田竜幸著
富士見ファンタジア文庫
2000年5月25日第1刷
定価560円

 舞台は、死刑が廃止になってそのかわりに「復讐法」が成立している近未来社会。犯罪の被害者は、代理人に復讐を依頼することができる。主人公のショウゴは〈執行代理人〉の一人。「復讐法」に反対する教団や〈執行代理人〉を標的にして逆に代理人を殺戮する特殊部隊と対決することになる。敵の中には、十五年前に〈災厄〉で誕生した超能力者たちも混じっている。追いつめられたショウゴたちが最後に使った手段は……。
 舞台設定は面白く、人間関係のからみあいも細やかに描かれている。ただ、アクションシーンなど細密に描かれているのだが、ところどころ穴があって苦しい部分があるのも事実。一番苦しいのは主人公の逆襲手段。読んでいて、ちょっとこれはずるいのではないかと感じられた。主人公の性格をもっともっと弱くしておかないと、最後の逆転シーンが効果的にならないように思う。
 新人のデビュー作である。多少の欠点はあっても、勢いで読ませる力のある小説でもある。それだけに、一番肝心の部分で拍子抜けしてしまうのが残念なのだ。次作は本書の続刊になると思うが、次こそカタルシスの部分をもっと効果的にもっていってほしいものだ。

(2000年6月20日読了)


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