読書感想文


偽りのリヴァイヴ
ゲノムの迷宮
宮乃崎桜子著
講談社X文庫ホワイトハート
2000年7月5日第1刷
定価590円

 宇宙飛行士の試験に遅刻しそうになり急いでいたタケルは、会場に行く途中である男にぶつかり、その人物と間違えられて賞金稼ぎの会社に拉致される。結局その会社に入社するはめになったタケルは、取り違えられたお尋ね者のヒンメル博士を捜索するために惑星エデンに侵入する。相棒は女装趣味のヤマト。彼はタケルの初恋の相手だった……ただし女性と間違えていたためにその初恋はショックとともに終わったのだが……。独裁国家エデンで彼ら二人が出会った人物は……。
 独裁体制下の社会の描き方がいくぶん類型的で、もう少し大衆のしたたかさみたいなものが出ていれば、独裁者のあせりも効果的になったと思う。設定はSFだが、そのSF的な設定が十分に生かされているかというと疑問符がつく。もったいないと思う。
 タケルとヤマトの関係は、ボーイズ・ラヴぎりぎりの線だが、いくら女装が趣味でそれが似合うといっても、一般家庭にもぐりこんでそこの女性をだましおおせるかなあ。そこらあたりにリアリティを求めるとボーイズ・ラヴものは成立しないのだろうけれど。

(2000年7月8日読了)


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