人間国宝桂米朝と先般引退した上岡龍太郎という異色の顔合わせによる昭和の上方漫才史。両者とも芸人として、またそれ以前にファンとして漫才を見続けてきた。そこに蓄積された記憶が惜しげもなく披露される。第一部は漫才コンビの名前とその芸風を次々とあげていく形での対談。第二部は、夢路いとし・喜味ひいしを加えてより具体的にエピソードを付け加え、芸人の実像を語る座談会。漫才作家の加納健男による中田ダイマル・ラケット論が終章として付されているが、これはダイラケの爆笑の秘密を深く掘り下げた秀逸なもの。
できればこれと連動してCDやビデオがほしいところなのだが、音源や映像がほとんど残っていない漫才師について語っているわけで、それは仕方ない。それよりも、そういった漫才師について記録を残していこうという趣旨であろう。そういう意味では資料的な価値が高い。落語に比べて漫才ではこのような本が少ないだけに、とてもうれしい一冊である。
(2000年7月9日読了)