東京近郊のベッドタウンが舞台。ニュータウン内部に自殺事件が続出する。人の悪意や霊魂を見ることのできる能力を持つ高校生、鷹飛羽隼は超常現象による犯罪を扱う女刑事、橘明日香とともに、その謎を解決しようとする。事件の影に見え隠れするマッドサイエンティスト。彼が研究していた「殺人音楽」とは……。
殺人音楽の仕掛けや、事件の影にひそむ人間関係などはしっかりと書かれているので、謎解きの面白さは十分にある。構成、展開もよくまとまっていて、しっかりしたものになっているとも思う。
ただ、そこに超能力少年や超常現象の担当刑事が必要であったかというと、私には疑問が残った。犯行のからくり自体が非現実的なのだから、それだけで十分であったのではないだろうか。シリーズ化するのに適したキャラクター設定ではあるが、いくぶん類型的であるように感じられた。
ノヴェライゼーション出身の作家がオリジナル作品を書くとき、そのキャラクターがどこかで見たもののようになることがままある。そのような弱点を作者がどう克服していくか、作者の個性をどう強く打ち出していくかが今後の課題ではないだろうか。そのあたりからいえば、シリーズ化された場合の第2巻が勝負となるように思う。
(2000年7月15日読了)