読書感想文


紅秘宝団
魔界都市ブルース
菊地秀行著
祥伝社 ノンノベル
2000年7月20日第1刷
定価800円

 魔道士トンブ・ヌーレンブルクの宴席で魔薬を飲まされた秋せつらは記憶喪失症になってしまう。一方、謎の秘宝の地図と鍵を刻印されたOL志貴加奈子は、その身を〈銀仮面〉と〈紅秘宝団〉と名乗る二つのグループに狙われていた。記憶を失っても妖糸を操ることはできるせつらは、加奈子をめぐる二者の争いに巻き込まれる。また、記憶を失ったせつらに対して、魔界医師メフィストは1週間後に治療すると約束する。
 〈紅秘宝団〉の首領、祇宗寺教授は加奈子とせつらに接触、加奈子の持つ鍵を使ってアトランティスの秘宝を入手しようとする。〈銀仮面〉、〈紅秘宝団〉、トンブ・ヌーレンブルクそしてメフィストも加わった、秘宝と秋せつらの争奪戦の結果は……。
 秘宝に関わる争奪戦やアクションシーンなどはいつものように読ませる。祇宗寺教授やP・キャットなどのゲスト・キャラクターもいい味を出している。にもかかわらず、作品として弱さを感じるのは、せつらの記憶喪失という状況をストーリーにうまく生かし切れていないからではないだろうか。トンブがせつらの記憶を喪わせた意図も本巻では不明であるし、その理由を臭わせる伏線らしきものもない。そこらあたりの整合性を求めたいところだが、ワン・アイデアをふくらませて一気に書いているという感じなので、そこまで手が回らなかったのだろうか。全ては完結編次第、作者の腕の見せ所だろう。

(2000年7月20日読了)


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