異星文明のおかげで宇宙間の航行はできるが、その他の文明は19世紀ごろの水準となっている世界が舞台。博物商ラスコーは、好事家ヴァカンティ伯爵の依頼で間もなく滅ぶ運命にある惑星ピニェルに動植物の標本を採集にやってきた。画工モニカに一目惚れした現地の採集人スタンは、彼女が監禁されていると独り合点して、彼女を救わんと交易船に密航する。しかし、密航がばれたスタンは船外遺棄の処分にあう。彼の命を救った生物の発見、そして彗星の軌道に乗って現れた謎の生物の登場。このままではピニェルはその生物の激突で滅んでしまう。惑星ピニェルの命運を賭け、スタンたちは未知の生物の軌道を修正しようとするが……。
19世紀の技術水準で宇宙の生物を観察するというアイデアにSFの面白さを感じさせる。博物商、画工、採集人の関係は「クレギオン」シリーズを想起させるが、モニカとスタンが意志疎通が苦手なためにぎこちない関係が続くところなど、人間関係の面白さも狙っている。
まだ夢やロマンにあふれていた時代の人々を主人公に宇宙SFを書くという試みは成功しているように思う。次巻以降が楽しみな佳品の登場である。
(2000年7月30日読了)