ホラー短編集という惹句が帯には書かれているが、ホラーがかっているのは表題作のみで、あとの3編はいわば現代的なメルヘンという感じがした。
表題作「石ノ目」は和風メデューサ伝説をモチーフにしたもので、怪談を意識しすぎてかえってよくある話になってしまっているように思われた。それよりも、少年たちが作りだした幻覚の少女との友情を描く「はじめ」、意志を持つぬいぐるみの持ち主への一途な思いを描く「BLUE」、犬の入れ墨が動き出しやがて飼い主としての意識が芽生える少女を描く「平面いぬ」といったメルヘン的な味わいのあるものが優れているように思う。特に「はじめ」は作者のストレートな思いが伝わってきて、本書では一番面白く読めた。
作者は21歳の大学生だということだ。小細工せず、ストレートにぶつけてくる思いが、ユニークなアイデアに乗っかったという感じの作品に、出来がいいものが多いのではないだろうか。背伸びをせず、等身大の人間像を描いていってほしい。
(2000年8月3日読了)