読書感想文


浪花少年探偵団
東野圭吾著
講談社
1988年12月12日第1刷
定価1000円

 しのぶセンセは大阪の下町の小学校に勤務する元気なお姉さん。持ち前の好奇心と行動力で次々と起こる事件に首を突っ込む。大阪府警の新藤刑事はそんなしのぶセンセに引っかき回されながらも惚れこんでプロポーズの機会をねらっている。しのぶセンセがお見合いした相手の本間というライバルも現れて、事件解決どころではない。しのぶセンセの受け持つ田中、原田、畑中たちやんちゃ坊主も協力して、しのぶセンセの推理で事件解決。ついに意を決した新藤刑事はしのぶセンセにプロポーズするが……。
 短編5編の構成。元気印のしのぶセンセのキャラクターもよいけれど、彼女の足を引っ張ったり助けたりする小学生たちが生き生きと描かれていて、私にはそれが魅力的に感じられた。存在感がある。大人をおちょくる態度のでかさ、ぬけているようでちゃっかりしているところなど、いかにも大阪の子。
 ミステリとしての完成度は必ずしも高いわけではないけれど、先生と子供たちと大阪の下町が舞台の痛快小説として楽しく読めた。やんちゃ坊主たちの卒業とともにしのぶセンセが内地留学という形で連作が終わるというのも気が利いている。
 多彩な作風で知られる作者の、初期の異色作として印象的な一冊である。

(2000年8月10日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る