建設コンサルタントの二宮は、産業廃棄物処理場建設の鍵を握る水利組合の同意書をとりつけてほしいと産廃処理業者の小畠に依頼される。しかし、水利組合の橋本は高い金額を要求してきてこれを拒否した。橋本の弱みを握ろうと尾行した二宮は、謎の暴漢に襲われる。その危機を救ったのは彼と取引のある暴力団員、桑原であった。二宮と桑原は産廃の利権に関わる政治家の権力争いや業者の利権争い、そして暴力団の勢力争いに巻き込まれていく。二宮と桑原は危ない端を渡りながら利権の核心に近づいていく。
巨悪に対抗する形になった二宮も桑原も、正義感で行動するのではなく、まず自分の利益を第一義に考えているところが、現実的な経済やくざの世界にリアリティを持たせている。
とはいえ、二人の間に微妙に通じている「腐れ縁」とでもいうべき「情」が作品に救いを持たせている。特にその会話の妙に感心した。活字で大阪人同士の会話の呼吸を表現できる作家はそうはいないだろう。
産廃処理場の利権という着眼点といい、追いつ追われつのアクションシーンといい、ストーリー運びの巧みさといい、一級品のエンターテインメントというべきだろう。一気に読ませる面白さである。
(2000年8月13日読了)