読書感想文


カウント・プラン
黒川博行著
文春文庫
2000年4月10日第1刷
定価457円

 目に入った数字を数えずに入られない若者がいる。その精密な行動に疑いを持った警察は、脅迫事件の犯人として彼の行動を追尾する。推理作家協会賞受賞の表題作は、精神障害のある青年を主人公に、決して差別的になることなくその心理をたどった佳作。その他、隣人のゴミに異常な関心を持つ男が登場する「鑑」など、常軌を逸したと思われる行動をとる人物を主人公にした短編が3本、ごく普通のミステリ短編が2本収録されている。
 精神障害者や異常な性癖者を描いたものは、犯罪をからめて描いているためその行動についての掘り下げは十分とはいえないが、異常者と犯罪の関連の描き方に工夫がしてあり、それらは読み応えがあった。しかし、それ以外のものは特に可もなく不可もなくという感じがして、そのギャップがなければ、短編集としての面白さがでたと思うのだが。そこらあたりが残念である。

(2000年8月18日読了)


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