新シリーズの開幕。
核戦争のために人類が限られた〈首都〉に住む世界が舞台。〈首都〉から離れた土地に住む〈亜種〉のシアオは友人のティエンとともに工業生産をしている。〈亜種〉は人間よりも寿命が短く30年あまりしか生きられない。また、男女は別に暮らし、恋愛を禁じられている。シアオとティエン、そして農業地区から移ってきた友人のヤマトは、〈亜種〉が入ることを禁じられている〈首都〉に潜入する。そこで彼らは上流階級に属する少女、ルーと出会った。ルーや首都の人間たちの言葉から、自分たち〈亜種〉が人間の道具でしかないのかと疑念を抱くシアオ。別の〈亜種〉の街で起こる革命。そしてシアオは育ての親のジョイから重大な秘密を打ち明けられ……。
舞台設定がしっかりとしている。人類家畜テーマやクローン奴隷テーマの要素をうまく組み合わせている。クローンたちの叛乱が起きないように宗教教育を施しているなど、細かな点までよく考えていると思う。この設定があるからこそ、自分の存在価値を否定されたときの少年の苦悩などが生きてくる。
本書のテーマは「自分」とは何かというところにあるのだろう。ただそれだけだとやや陳腐になりそうなところを、SFでしか表現し得ない設定のために実に自然に読者に訴えかけることができているのだ。
類型的な部分がないではないが、しっかりした骨格があるため読んでいるときには特に気にはならなかった。まだ物語は始まったばかり。次巻以降の展開に注目している。
(2000年9月9日読了)