H・G・ウェルズ「宇宙戦争」の後日談。
火星人たちが最近によって全滅したあと、イギリス軍は残されたその超兵器を調べ、第一次世界大戦の対ドイツ戦に使用する。世界各国が火星人の兵器を自分たちの手で動かし、複製する中、日本軍もまた日本に現れた火星人の兵器を使いこなしていた。シベリアのツングースに落下した物体に火星兵器の謎が隠されていると知り、政府の役人である白石にその調査を依頼された工学博士園部は白石の部下、飯島や火星兵器を操作できる軍人、松永らとともに現地におもむく。現地の少女アソーラの案内で隕石落下跡に到着した彼らは、水晶の卵を発見する。その卵を手にしたアソーラは火星人の操り人形と化し、殺戮を開始する。それは、火星人たちが再び地球を襲う予告でもあった。地球人のスパイを多数確保した火星人たちは、今度こそ地球を手に入れるのか。園部たちの新たな戦いが始まる。
「宇宙戦争」の後日談はP・G・サービス「エジソンの火星征服」など多数あるが、本書は架空戦記のテイストを加え、火星人の兵器を存分に活躍させるという点で個性を発揮している。地球人が火星人の残した兵器を再利用するというアイデアが光る。
架空戦記の体裁をとっているために、戦闘シーンに多くページを割き、謀略戦もたっぷりと書き込んでいる。しかし、テーマはあくまで人類と高次の生命体との戦いを通じて生命の尊厳とは何かを問うもので、SFの特質を十分に持った作品である。
数多い「宇宙戦争」のパスティーシュにユニークな一編が加わったわけだが、超兵器の使用法やや国際情勢に焦点を当てた本書は、注目に値する作品といえるだろう。
(2000年9月9日読了)