大阪のミナミにある小さな商店街「夢見通り」。詩人志望の春太は、そこに間借りしてアルバイトをしながら夢をかなえようと日々を暮らしている。性欲を持て余している肉屋の兄弟、美男のバーテンばかりを雇い必ずそのバーテンと関係を持つスナックのママ、店の品物を盗み金に換えパチンコ屋の娘と駆け落ちする時計屋の息子、そして春太がほのかに思いを寄せる美容師見習いの光子……。様々な人々が織りなす人間模様を描いた連作長編である。
本書は「フリークス」の物語である。何かが欠落した人々が何かを夢見ながら、しかし現実に押し流されていく。その喜怒哀楽を情感あふれる文章で活写しているのだ。市井に生きる、一見平凡な人たちが、しかし何かしら「業」を抱えてその日を暮らしている。その「業」を見事に切り取りことさらに誇張することなくさりげなく提示している。それは読み手の誰もが抱える歪んだ感情である。その表現のうまさに舌を巻く思いがする。そこに使われている大阪弁が、効果的である。
読後、なんとも切なくなる佳品である。
(2000年8月19日読了)