那國という地球型の文明を持つ勢力が、無人恒星間探査船の報告を受け、惑星エキドナを調査に来る。エキドナには産業革命程度の文化が発達し、やはり地球型の文明を築き上げていた。しかし、エキドナの衛星ラミアには那國の文明でも製造不可能な核融合炉などの遺跡が残っていた。エキドナの文明とのギャップの秘密を探ろうとする那國の調査官、マーサ教授。一方、調査隊に同行する那國の当主代理、沙粧大獄はエキドナを首都エクスカーナの支配下においてエキドナ人たちを隷属させようと企む。エキドナの王女、シズノ姫は異星人の来訪を察知、二つの文明のファースト・コンタクトが始まる。
ファースト・コンタクトといってもそれぞれ全く違う生態系の異星人ではなく、どうやら種は同じと考えられる。ファースト・コンタクトもののSFとしてはかなりユニークな設定だ。科学水準の違い、どちらも内紛の種を抱えていてそちらを解決しながら接触を図るなど、ファースト・コンタクトに政治的思惑がからんでくるところなど、架空戦記でおなじみのシミュレーション的要素がふんだんに含まれている。
もちろん、本書は架空戦記の舞台を宇宙に移しただけのものではない。設定はハードSFのそれで、二つの文明がどのようにして生成されていったかなどはSF的なアイデアが基本となっている。
そういう意味では架空戦記作家とハードSF作家の二つの顔を持つ作者らしいシリーズの開幕といえるだろう。作者の長所がうまくかみ合っていて、今後の展開におおいに期待できる。
(2000年9月19日読了)