読書感想文


競馬放浪記
新橋遊吉著
角川文庫
1982年4月10日第1刷
定価380円

 戦後の混乱期、大阪に住む不良高校生の戸上正人は友人から競馬の面白さを教えられ、淀に日参するようになる。大穴を取って意気揚々とした正人はダービーで当てようと東京に行くが、有り金を全てスリに取られてしまう。競走馬の産地を一目見たいと北海道の牧場でアルバイトとして働いた正人は、牧場主の娘、妙子と一夜限りの関係を結ぶ。大阪に戻り幼なじみの美津子に恋慕する正人の前に、妊娠した妙子が現れた。正人は妙子とともに九州に渡り、勝負師として一旗揚げようとするが……。
 主人公の無軌道ぶりは、戦後、目標を見失い自暴自棄になっていた若者の姿なのだろう。酒に、女に、そして馬券に溺れていく彼の弱さは、続編の「男が賭ける」では経済成長に取り残された姿となって再び描かれることになる。
 昭和20年代後半の、伝説のレースが小説の中で再現され、その描写が臨場感あふれるものだけに、競馬にのめり込む主人公の心情も理解できる。
 生涯競馬をテーマにした小説を書き続けた作者の代表作。行き当たりばったりの正人の生き方を競馬場を背景に描き出した本書は、決して人間的に成長しない青年のなんともいえないやるせなさを感じさせる、青春小説の傑作なのである。
 残念ながら現在は絶版。新橋遊吉の再評価ももっと進められるべきだと思うのだが。

(2000年8月21日読了)


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