第1回日本SF新人賞佳作受賞作。
人間に寄生して増殖する〈敵〉。それは古くから存在していた。ただし、その姿は特定の能力を持った選ばれた者にしか見えない。高校に入学したばかりの主人公、小南佑は母が〈敵〉に〈汚染〉されて死んでしまう。彼はリジェネーターと呼ばれる高次元意識が組織する集団に見出され、友人の堺不動(フユルギ)とともに〈敵〉を殲滅する戦いを始める。〈敵〉をほとんど退治してしまったあと、彼らの組織に所属していた仲間たちが次々と不可解な死を遂げる。その謎をたどっていった佑がたどりついた真相とは……。
〈汚染〉、そしてそれを排除する役割を果たす者たち。〈敵〉の正体も、〈汚染〉の原理も、さらにリジェネーターの存在についても、本書では一切説明されない。これは作者が意図的に描かなかったということなのだろう。これをくだくだしく書き綴ると、作中で白血球に例えられる少年たちの心の動きを十分に描ききれないという作者の判断があったものと考えられる。その心理描写は、これでもかこれでもかと痛く読者を刺していく。少年が大人になるための通過儀礼をSFとして描こうという試みではないかと私は読んだ。
果たしてそのような心理描写のためにこのようなSFとしての設定が必要不可欠であったかどうか。そのあたりを考えると、〈敵〉やリジェネーターについての手がかりをもう少し多めにしてもらいたかったと思う。そうすればこの設定の必然性が伝わってきたのではないだろうか。
いろいろな暗喩によって人間が抱える足下の危うさや脆さを感じさせる筆力は新人ながらなかなかのもの。今後、この作者が青春小説のテイストの高いものを書き続けていくのか、それとも本格SFの方向に進んでいくのか。次作以降を注目していきたい。私としてはもちろん、本格SFを指向してほしいのであるけれど。
(2000年9月24日読了)