反粒子工学研究の第一人者であるバリー博士が家族ごと誘拐される。犯人はサイ能力者のルーバルたちで、彼等はバリー博士が強大なエネルギーを他の空間から引き出してくるテグタニオ空間の解放をストップさせているために、博士を誘拐して計画を推進させるよう強要しているのだ。しかし、テグタニオ空間を解放することによって起こるロコンゴという運動は、人類のすむ空間を崩壊させる危険性に満ちていて、博士は承諾しない。博士の娘、リーの体内に微細な爆弾を仕掛けたルーバル。博士は最強のサイ能力を持つレインに助けを求めるが、レインは自分の能力を過信して他者を殺害した過去にこだわり、その能力を使うことを自分に戒めていた。ついに始まったロコンゴ運動。人類の危機にレインがとうとう動き出す。
大きな力を持つが故にその力の影響を怖れる主人公の葛藤が、異次元空間の運動から人類の危機を阻止する行動にブレーキをかける部分など、スリリングな展開をもたらすものになっていて、一気に読ませる。ロコンゴ運動のアイデアは諸星大二郎の「生物都市」のアイデアと重なるもので、そこが気にはなったけれど、アイデア処理の仕方や展開の仕方が違うものになっているので、第1巻の時点ではその類似性を指摘するだけにとどめておくべきだろう。次巻以降、このアイデアをどのように発展させていくかで評価が変わっていくはず。
1996年に発表された作品を全面改稿した上で、新たにシリーズとして出発させている。主人公がどのように変化していくのか、未消化のままのアイデアをいかにして完成させていくのかなど、今後に注目していきたい。
(2000年9月27日読了)