軍用に開発された人造人間のリオ。彼女は赤道直下の小さな島でフリーのトラブルシューターをしている。彼女の前に持ち込まれてくるのは、軍事機密を持った女性を宇宙に逃亡させる仕事、軍事用に開発された最新の人造人間が逃亡したのを捕獲する仕事、そして超高速機関のシステム構造概念図を売りさばこうとして世界中から狙われている山師のボディガード……。持てる限りの力を発揮して、リオは仕事を全うする。自分の存在意義を確かめるかのように……。
リオのキャラクター造形それ自体にはそれほど魅力を感じないけれど、最強ともいえる力を持ちながら人間味のある弱さを持つ人造人間という設定は十分生かされていると思う。同じ主人公による短編を3編収録しているが、私は第2話の「duel」を最も面白く読んだ。兵器が意志を持ったならばどのような行動をとるかというテーマを人造人間同士のサバイバル・ゲームという形をとってシミュレートしているところに、アクション小説に高いテーマ性を持たせることに成功したと感じさせるものがあるのだ。
本書は1990年に発行されたものの再刊であるが、作者の全面改稿版として、また新シリーズの第1巻として新たに生まれ変わったといっていいだろう。今後、シリーズの巻を重ねることにより、リオの製造の秘密や彼女をめぐる人々のエピソードを加えていって、作品世界に深みを持たせていってほしいものである。
(2000年9月28日読了)