読書感想文


ハルピュイア奮戦記 第一話 翼の誕生
秋津透著
ハルキ文庫
2000年9月18日第1刷
定価600円

 商人の一族が統治するトリーンファルト星系の惑星ニケが舞台。統治者ドリーンファルト一族の娘で、孤児院を運営するマリアは、一族とは一線を画しながら多忙な毎日を送っていた。しかし、平凡な毎日も軍事帝国のカルヴァントラ艦隊の宣戦布告により破られる。カルヴァントラ軍はニケに惑星破壊砲を向ける。傭兵部隊のローガン大佐たちは必死の防戦。しかし、二ヶの運命は風前の灯火。そのころ、マリアの実父で遺跡探索者のロイは、遺跡から古代生物の卵を発掘し、孵化させていた。生物宇宙船であるハルピュイアは、ロイの命令でマリアを救い、宇宙に飛び出す。マリアの今後の運命やいかに。
 いきなり主人公の住む惑星が破壊されてなくなってしまうという大胆な展開。しかし本書は長い物語のプロローグでしかない。いわばシリーズ全体の設定を説明しているだけなのだ。したがって、本格的な展開は次巻以降ということになる。登場人物はほとんど善人という健全なスペースオペラ。それだけに、全てを失ったマリアが復讐に燃え、修羅となりカルヴァントラ帝国を滅ぼそうとする……ような展開にはならないだろうな。もしそうなったら作者の新境地となるのだけれど。
 設定はさすがに興味深くできている。しかし、本格的な展開をする次巻以降にきっちりした評価は持ち越し。読み手の予想を上回るパターン破りの展開を期待したいところだ。

(2000年9月30日読了)


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