旧家のしきたりにのっとり、「おナガさま」を降ろす役目を果たすことになった涼子とその従兄弟の渉。本来なら女性のみが果たすべきその役割に男性である渉が臨んだことにより、渉に「おナガさま」が憑いてしまう。蛇神である「おナガさま」を落とすことができるのは秘神、言織比売(ことおりひめ)。涼子は「おナガさま」を渉の体から祓いたい一心で、言織比売を探す。「おナガさま」と言織比売の因縁とは何か。涼子は渉をもとに戻すことができるのか……。
日本神話の大系を借り、秘神を創造し、神同士のそのあまりにも人間くさい愛憎を描いている。これはつまり異世界ファンタジーの手法で書かれた伝奇アクションなのである。
伝奇アクションの中には、あまりにもお手軽に実際に使われていた呪術などを用いて単純なストーリーを組み立てているものが見受けられる。本書はそれらのオカルト・アクション小説とは似て異なるものである。ある意味ではそのような単純なものへのアンチテーゼといえるかもしれない。
作品の完成度についてはまだまだ甘いところがあるように感じられたが、あまたある伝奇アクションに新風を吹き込む作品として、また作者が新しい境地を切り開いている点など、評価すべきところの多い作品なのである。
(2000年9月29日読了)