高校生の女鶴つぐみが不良にからまれていたのを助けたのは、甲虫のような鎧を身につけた不思議な存在だった。翌日赴任してきた美術教師、二階堂虹司がその鎧の人物であると直感したつぐみは、自分から虹司に積極的にアプローチしていく。しかし、虹司はつぐみを自分の虜にして母親の緋美虎の生け贄にするという目的があった。つぐみを愛するようになった虹司だったが、彼は自分の醜い正体を知られたときの彼女の反応を怖れる。さらに、彼女を母親に捧げることを拒否し、守り抜こうと決意する。しかし緋美虎はそんな虹司の考えを察知し、つぐみを捕らえてしまう。虹司はつぐみを守りきることができるのか。そして、母親と戦うことができるのか……。
本書では美しい仮面をかぶった者の真の姿の醜さ、そしてその外見とは違う心の美しさを見極めよ、というメッセージを発している。外見にとらわれるなというテーマをちょっとひねっている感じだ。ストーリー展開はかなりストレートなものだが、テーマをひねっているためにそれが伝わりにくい感じがする。
主人公の少女が異常な事態を次々と受け入れていくあたり、そんなにスムーズに事を運んでもいいものかと思う。ストーリーを追うことに気をおきすぎて、登場人物の事件に対する反応がなにか少しずれたものになってしまっているのが残念なところ。
そのずれ具合で面白さが生まれてくればそれはそれでよいのだが、なにかこう違和感みたいなものが最後まで残ってしまった。もう少し工夫すれば、かなりスケールの大きな物語になるだろうに、結局は泣かせの入ったラブコメディアクションというようなものに仕上がっている。果たしてそれは作者が本当に書きたかったものなのだろうか。そこらあたり、どうも悔いたりなさの残る、何かヘンな小説である。そのヘンな部分をうまく言葉で表現できないのがもどかしい。
(2000年10月14日読了)