読書感想文


オズの魔法使い
ライマン・フランク・ボーム著
佐藤高子訳
ハヤカワ文庫NV
1974年11月30日第1刷
1994年11月30日第34刷
定価560円

 ジュディー・ガーランド主演の映画でもおなじみのファンタジー。なんと今年は本書が書かれてちょうど1世紀になる。
 竜巻でオズの国にとばされ、故郷カンザスに帰りたい少女ドロシーが、脳味噌を欲しがるかかし、心臓を欲しがるブリキの木こり、勇気を欲しがる臆病ライオンとともにエメラルドの都を訪れ、オズの魔法使いにそれぞれの願いをかなえてもらおうとする。道中には様々な困難が待ちかまえているが、彼らはそれぞれに足りないはずの力を発揮してそれを乗りこえる。魔法使いが出した条件である東の魔女を倒すという課題を果たした彼らの前に現れた魔法使いの本当の姿とは……。
 知恵、感情、勇気という3つの要素の大切さを説いた教訓的な物語であることに、久々に読んで気付かされた。もっとファンタスティックでナンセンスな物語だと思いこんでいたのだ。また、ストーリーの展開にあまり寄与しないエピソードも多く含まれていて、物語としての完成度も決して高いとはいえない。しかし、そういったエピソードの積み重ねがこのファンタジー世界の雰囲気作りをしていることも確か。
 キャラクターの個性が際立っていることで、教訓的な古くささが薄められているということになるだろう。だからこそ、本書が長く子供たちに読み継がれているのだろう。単純で読みやすいが、皮肉も効いていてやはり独特の味わいがある。

(2000年10月14日読了)


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