世界の歴史の真相は、全て魔界の者と人間との戦いによるものだった。その退魔一族の一人、礼破門乱麗は、これまで女子相続の例のない礼破門家の一人娘。次期総帥にはなき父が養子にとった乱晴がつくことになっていた。しかし、乱麗は自分が総帥を継ごうと考えている。ただ、彼女は父がかけた封印によって、魔族を倒すことのできない身。退魔一族の夜城院家の総帥、夕弥が御法の剣「時雨丸」の魂を移す儀式に参加することにより、総帥候補として認められようと考える。しかし、儀式の最中、かつて多数の退魔一族により封印された強大な魔族、ほらきが復活しようとしていた。乱麗と夕弥はほらきの復活を食い止めることができるのか。愛するものを切り捨てる非情さを持つことができるのか……。
人類史の影に隠れた魔界のものとの戦いという設定はよく見られるが、作者は入念にこの設定を練り上げ、あらゆる事件をその戦いを裏付けるものとして作り上げることができた。そこに、激しいアクションあり、恋愛あり、と様々な要素を盛り込み、かなり読みでのある作品に仕立てあげている。
しかし、残念ながら設定の解説を入念にし過ぎていて、前半のストーリー展開のテンポがあまりよいとはいえない。確かにすべての設定がわかっていなければ面白くない性質の物語ではあるのだが、その設定の見せ方に課題が残ったといわなければならないだろう。
したがって、設定を全て解説し終わってからの後半の展開は勢いのあるタッチで読ませる。全体のバランスの取り方に問題があるのではないだろうか。面白い小説の構成のしかたに習熟すればこの作者にはもっと期待できるのだろうが、今のままではまだまだ難しいように感じた。後半の展開のように前半も書けていれば……と思わずにはいられない。そのコツをつかんだときの作者の大化けに期待したい。
(2000年10月27日読了)