電脳トラブルの民間調査機関「ページ11」の大空藤丸は、ガシャポンの機械が次々と失踪するという珍事件に着手していた。他の局員は公共施設のネット異常で都市の動きが麻痺してしまっている事件にかかり切り。しかし、この2つの事件は、思いもよらないところでリンクしてくる。そのキーワードは「紫竜」。中学生ハッカーが自由研究で公共施設集中管理制御プログラムにもぐりこんで解き放っていたある者の思念データの暴走が原因だった。「紫竜」が求めるものはなにか。その鍵となる少女浦島かえでは、今まさに国外へ旅立とうとしている。「紫竜」の暴走を止めるために藤丸たちが動き出した。
「ミルキーピア物語」でネット社会を予言した作者が、満を持して送る新しいネット社会の物語が始まった。「ミルキーピア」の登場人物がからんでくるのもファンには嬉しいところ。
インターネットが日常的なものとなった現在、それを使いこなすものの倫理が問われることになるが、本書で扱われている事件の発端の一つに中学生のハッキング行為をもってきているあたり、さり気ない書き方ではあるのだが、作者の問題意識を感じさせる。
最先端の技術を扱っているにもかかわらずなんとなく甘く懐かしい感じがするのは、少年と少女の純な愛情をストーリーの中心に据えているからだろう。だからといって作者は少年の一途な想いを全面的に肯定してるわけではない。そういった想いが暴走した時の恐ろしさ……ここに本書のテーマがあるのではないだろうか。
本書以降は浦島かえでを加えて「ページ11」シリーズとして続刊が予定されているようだが、「ミルキーピア」を超える、現在のネット状況をとらえたシリーズとなることを期待したい。
(2000年11月30日読了)