豊臣秀吉が天下を統一して実現したつかの間の平和。飛騨の剣士、来生伯労は、荒々しい少年、木場彦に出会う。木場彦は村を滅ぼした山神を自らの手で倒すというのだ。興味を持った来生は木場彦が山神を倒す死闘に立ち会う。木場彦は山神の肝を食らい、姿を消した。7年後、石田三成の配下となっていた来生は、木場彦から牙彦へと改名したのち、丹波の金毛の猿を倒した牙彦を仕官させる。種子島の名手荒垣健吾、剣豪長峰陣左衛門、猿の化身業丸とともに島左近の与力となった牙彦は、そこで「らん」と名乗る南蛮帰りの美貌の若侍と出会う。妖術を扱うらん、そして彼が守る夢姫は豊臣家に荷担することで何かとんでもないことを狙っていた。やがて牙彦はらんと戦う宿命にあることを知る。果心居士や西洋の巨人たちもこの戦いに加わっていく。そして、関ヶ原の戦いが始まる。大坂にとどまったらんと夢姫の目的は。牙彦はその宿命に従って、戦い通すことができるのか。最後の決戦の時は近づく……。
本書は、帯の推薦文を私が書いているので、それをもって感想に代えます。
◎これは反則だ! 常識を撃ち破る破壊力!
魔物の肝を喰い、自らを修羅の道に追い込む男、牙彦。戦国時代を舞台に、権力にそして歴史の流れにまで反抗する男、牙彦。荒削りながら読み手を惹きつけずにはおかない迫力。これは時代伝奇小説の形を借りたハードバイオレンス小説なのだ。そして読み手を仰天させる展開! これは反則だ。こんなことが許されるのか。しかし、この反則なら許す。この小説には、常識を撃ち破るだけのパワーが、ある。
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(2000年11月9日読了)