大財閥の一族に生まれた御鏡旅士は、度重なる嫌がらせを受け一族と訣別することを決める。今は亡き母の実家で生まれ育った故郷、沖縄に帰る途中の飛行機で、彼は刺客に襲われる。敵は神武コンツェルンの操る術式鬼。呪術の力で機械に魂を吹き込み、奇怪な鬼に変身させるのだ。彼は危機一髪で巨大ロボットに救われる。そのロボットは仙術機。沖縄を本拠に神武コンツェルンの野望を防ごうとする猫耳の仙人、月読井草に率いられる「シュレイオー」の秘密兵器なのだ。パイロットは東欧の王女、アロウと虎の本性を持つ少女、紫堂虎鈴。旅士には仙術機のパイロットとなる資質があり、精神を同化させ、術式鬼を倒す。沖縄を贄にして本土の安全を強化しようとする神武コンツェルンは、「シュレイオー」を倒すために核兵器を持ち出してくる。旅士たちは神武コンツェルンの野望を打ち砕くことかできるのか。
巨大ロボットアニメを思わせる設定にコミカルな味付けをした、少々マニアックなところのある話。ただ、バックボーンに沖縄と本土の微妙な関係をもってきているため、いろいろと深読みもできる。作者自身、沖縄在住ということもあり、いろいろと思い入れを感じさせる。
むろん、本書はエンターテインメントであり、まずはマニア向けに徹したアクション小説として楽しむべきものなのだ。それでも、背景に沖縄の抱える問題がある以上、それを意識せずに読むことは不可能だ。今後シリーズになるような展開であるが、こういった作者の思い入れがプラスとなるか、マイナスとなるか、注目していきたい。
本書ではその試みは成功しているように思われるし、ともかく理屈抜きに楽しめる。作家が書きたいことを書きたいように書くと、読み手もそこに引き込まれるものなのである。
(2000年12月10日読了)