2000年度ロマン大賞佳作入選作。
高校生の風見恭一は、人の魂を見る能力を持ち、その魂がぶじに「あの世」に行けるように導く炎を灯す「魂守」の血をひいている。しかし、彼は霊が苦手でふだんは魂が見えないように曲玉を首にかけている。そして、なるべく友だちを作らないようにしている。しかし、同級生でいっしょに図書委員をしている佐倉初音はなにかというと彼にかまってくる。初音に気があるらしい中川には嫌な目つきで見られ、うんざりする毎日。ある日、彼が通学する「蛇坂」と呼ばれる道で見つけたものは頭蓋骨であった。そこで事故死した日野氏という会社員は、残していった家族が心配で「あの世」にいけないのだ。日野氏の妻子を一目見たいという願いをかなえるために、恭一は頭蓋骨との奇妙な共同生活を始める。「蛇坂」で数年前に起こった女子生徒殺人事件の犯人を目撃していた日野氏。恭一は日野氏の証言をもとにその犯人を見つけるが……。
たまたま不思議な能力を持って生まれた少年と頭蓋骨になってしまったサラリーマンの会話など、なんかとぼけた味があって、妙に楽しい。特に突出した魅力があるというわけではないのだが、この味は捨てがたい。主人公が彼に想いを寄せる女の子のおかげで心を開いていく様子など、少し古いタイプの青春小説という感じなのだが、物語の運びがうまいので、それが欠点にはならず、かえってさわやかな印象を与えている感じがする。
そういう意味で、この作者には将来性を感じる。現在のところはまだまだ完成されていないが、力をつけていけば面白い存在になれるのではないだろうか。計算づくではこの味は出せない。おそらく天性のものだろう。これは大事にしていってもらいたいところだ。
(2000年12月10日読了)