読書感想文


ミトコンドリアと生きる
瀬名秀明・太田成男著
角川oneテーマ21
2000年12月1日第1刷
定価571円

 ミトコンドリアを主人公にした小説「パラサイト・イヴ」の作者、瀬名秀明とミトコンドリア研究25年という大学教授が、ミトコンドリアについて素人でもわかるように解説する。
 実際、私の場合、高校の生物の授業などで「ミトコンドリア」というものが細胞の内部にあるということは学んだけれども、それが具体的にどのような働きをするのかは知らなかった。「パラサイト・イヴ」でその存在を強く意識づけられることにはなったのだが、むろんあれは科学書ではなく小説なのでわざと誇張した部分もあっただろうから、正しく理解できていたかというとそれはあやしい。
 まっさらな頭で本書を読むと、ミトコンドリアなるものが生物にとってどれほど重要な役割を果たしているのかが非常に強く印象づけられるつくりになっている。
 本書ではまずミトコンドリアが核を持つ細胞と共生することによって生き延びてきた存在だということが述べられる。そして、その共生により、酸素という危険な物質が増加した地球上で多細胞生物が生き延び、そして進化できたのだとされる。ここらあたりはなかなかドラマチックだ。そして、ミトコンドリアが生物の活動に必要なエネルギーの産生に必要不可欠な働きをしていることが説明されるとともに、体細胞に対し危険性の強い活性酸素も産生しているという両面性も提示される。
 ミトコンドリアDNAという特別な遺伝子を持ち、それは母系遺伝するところから人類の起源をアフリカにたどることができるそうだ。生殖細胞を作るのもミトコンドリアの働きならば、老化の秘密もミトコンドリアが握っているという。本書ではこのように、ミトコンドリアを多面的にとらえ、そのユニークな存在を正しく認識させようという努力がはらわれている。
 最新の研究成果を取り入れた本書は、一般向けの科学解説書というだけでなく、ミトコンドリアに魅了された男たちの真情告白でもあるだろう。太田の関わる「ミトコンドリア病」に対するとりくみの紹介からもそれは伝わってくる。
 遺伝子についての初歩的な知識がないと読みにくい部分もあるけれど、本書はミトコンドリアについて知るためのよい案内役であることだけは確かである。
 ところで、本書を読むと、私の体温調節のしにくい変温動物体質や妙に疲れやすいとろなど、「ミトコンドリア病」にあてはまっているみたいな気がするのだ。読んでいるうちに、その点など著者たちに相談したくなってきた。うーむ、そうだったのか。

(2000年12月22日読了)


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