読書感想文


ゴーストエリアQ
傭兵グランド1
岡本賢一著
朝日ソノラマ文庫
2000年4月30日第1刷
定価490円

 戦争が終わると、お払い箱になるのは傭兵たちだ。「死にぞこない」のグランドは、こわれかけた機械の体と脳内に組み込まれたおしゃべりなプログラム、エレンとともに、スペースコロニーの吹きだまりに一文無しで生きている。暴力団の喧嘩にからんだ結果、彼は命を奪われるかわりに危険な仕事を請け負う羽目になる。コロニーの継ぎ目に旧戦艦を並べて通路にした「エリアQ」で、少年たちが誘拐され傭兵たちは行方不明になる事件が連発していた。その中にはコロニーの有力者、ラルゴの娘、レミアもいた。彼の任務はその誘拐犯を捕らえること。他の傭兵たちとともに「エリアQ」に侵入したグランドは、旧軍の最新兵器レーザーワイヤーの襲撃を受ける。なんとそれを操っていたのは誘拐されたはずの子どもたちだった。子どもたちの意図は何処に、そして最新兵器をめぐる戦闘の行方は……。
 新シリーズの開幕である。
 高い技量で生き延びてきた傭兵と未来に向けて生きていく子どもたちを対比させ、痛快なアクションの中に人生のほろ苦さをしのばせようという試みだろう。特に、体を機械に変えることにより変化する人生観というものをはっきりと描き出している。
 ただ、ストーリーがストレートでひねりがないので、その苦みを十分に生かし切れていないように感じられる。特に主人公の性格が何度も死線をくぐり抜けてきた人間とは思えないほど冷徹さを欠いているところで、私はなにか物足りなさを感じてしまった。
 ほろ苦いはずの物語が、全体に甘い味付けになってしまったという感じか。どうしても子どもがからむとそちらに流されやすくなるのかな。次巻ではほろ苦い味わいを期待したい。

(2000年12月25日読了)


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