読書感想文


リングテイル 勝ち戦の君
円山夢久著
メディアワークス電撃文庫
2000年2月25日第1刷
定価550円

 第6回電撃ゲーム小説大賞受賞作品。デビュー作である。
 魔道師見習いの少女マーニは、ミヌス王の気まぐれで宮廷に呼ばれ、幻影を描いてみせるよう要求される。憧れの大魔道師フィンダルの見ている前で、マーニは自分でも思いもよらない幻影を描いてみせる。フィンダルの弟子となった彼女は、王や師とともに戦場に臨むが、戦況は味方に不利に。王は伝説の〈勝ち戦の君〉を召喚しようとするが、なぜかそれを阻止しようとするフィンダル。しかし、フィンダルが敵襲に倒れた時、王はマーニとともに過去の王の墓所におもむき、〈勝ち戦の君〉を召喚しようとする。そこに現れた者は……。
 明るく物おじしない少女と、冷徹で異形の獣〈怪異〉を操る魔道師、ロマンティストで無鉄砲なところのある王という3人のキャラクターの対比が面白い。また、魔術を使うためには正確なイメージを形作らねばならず、そのためにデッサンの修行をするという設定もユニーク。
 勝利を得るためには何かを犠牲にしなければならないなど、因果応報的な世界観がいかにも和製ファンタジーという感じがする。新人ながら、設定や構成がしっかりしていて実力を感じさせる。ただ、「物語」の枠組みにとらわれてしまっているのかあっと驚くような飛躍がなく、まとまり過ぎているような印象も受けた。
 この筆力に大胆な展開が加われば、かなり面白い存在になりそう。続刊にも期待が持てる新人の登場である。

(2001年1月8日読了)


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