読書感想文


クラシック、マジでやばい話
クラシック恐怖の審判3
許光俊編著
青弓社
2000年11月20日第1刷
2000年12月20日第2刷
定価1600円

 クラシックのCDで「ライヴ盤」と称して複数のコンサートやリハーサルを編集し、ミスのない演奏にして販売している。歴史的録音のCD化で演奏ミスが修正されている。リマスタリングを施した結果、かえって演奏から生気がなくなってしまっている。レコード会社のクラシック音楽に対する姿勢。レコード批評家たちのレコード会社に対するおもねり。海賊盤よりも音質の悪い正規盤の問題……。
 本書は、現代のクラシック音楽市場の抱える様々な問題を歯に衣着せぬ論調でえぐり出したもの。むろん執筆者たちのクラシックに対する愛情から出たものであるし、読んでいてうなずく部分も多い。ただ、これらの提言で問題点が改善されたからといって、クラシックファンの人口が増えるものになるのかどうかということは、正直いって疑わしいし、マニアックなファンを喜ばせるにとどまるものなのではないかという気がする。
 要するに芸術としてのクラシックと商品としてのクラシックをわけて考えなければ、これらの提言もクラシック音楽産業に対する警鐘とはなりえないのではないか。そういう意味では、クラシックのファンにとってはある意味で痛快な気分になる本書も、そうでない人にとってはそんなことにこだわらなくてもいいんじゃないのということになりはしないかと感じた次第である。
 それでも、本書の提言を無視したままクラシック音楽産業が現状を維持していった場合、先細りどころかジャンル自体が衰亡していくように、危機感を喚起するという意味ではかなり重要な提言ではあることは確かであろう。

(2001年1月22日読了)


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