歴史を知るためには、まず言葉を大切にしなければならない。今、我々が使っている言葉の起源を知り、そしてかつてはどのような意味で使われていたのかを知ることにより、我々の歴史認識が大きく変わっていく。
本書の主張を一言でまとめるとこうなる。
そして、本書ではその例証として、様々な言葉を提示し、それらが初めて使われた時期を特定する。そこで示された言葉の意味は、現在使われているものとは違うのだが、その影響が今も残されていることも同時に知ることができる。
例えば「日本」という国号はいつできたのか。どのような場合に使われてきたのか。それ一つをとっても、その言葉の持つ意味の深さに驚かされる。関東、関西、自由、百姓、落書、そして被差別民の呼称……。
本書は網野史観の特徴を端的にとらえているとともに、講演をまとめ直し文章化したものであるため平易で理解しやすくなっている。そういう意味では、「日本の歴史をよみなおす」(ちくまプリマーブックス)と併読し、歴史というものを改めて考え直す入り口となるものだろう。いわゆる〈自由主義史観〉なるものの犯している過ちがどこにあるのか。それもまた本書を読むと見えてくる。
それは、その時代の認識に立って歴史を考えることであり、恣意的な見方を排除することある。本当の意味での「教科書の教えない歴史」がここにはある。
(2001年2月4日読了)