読書感想文


神殺しの丘
日向真幸来著
朝日ソノラマ文庫
2001年1月30日第1刷
定価552円

 ローマ帝国がキリスト教を国教とした時代が舞台。それまでローマ人の信仰していた神を守っていた若き楽師カノン。彼は異教徒として皇帝に追われ、ブリテン島にたどりつく。ケルト人の巫女、ミネルヴァはカノンを救うかわりに、ケルト人の神を蘇らせる祭の司祭になってほしいと依頼する。ストーンヘンジの並ぶ丘で妖神ポルキスを殺そうとするカノン。奴隷剣士のステファノも仲間に加わり、いよいよ祭は実行にうつされようとしていた。しかし、ローマ皇帝の追手がカノンの間近に迫り、ケルト人の祭を妨害しようとする。カノンは妖神を滅ぼし、豊穣の神を降ろすことができるのか……。
 古代ローマ時代のブリテンという非常に珍しい題材を使い、人間と神の関係をファンタスティックに描いた野心作。洋の東西を問わず、古代そのものに関心を持つという作者の特徴がデビュー第2作にして明らかになってきた。デビュー作同様、少々甘ったるさを感じさせる展開も、本作では迫害される異教徒たちの寂しさを癒す要素として有効に働いているように思う。全体の構成も前作よりも格段とうまくなり、読みごたえがでてきた。
 今後もこの路線を貫き、古代西洋を舞台とした伝奇小説作家というポジションを確立していけば、個性派の作家として大きく成長していきそうな予感がする。

(2001年2月11日読了)


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