第7回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作で、作者のデビュー作となる。
賀茂是雄は、霊視能力を持ち占い師のバイトをする高校生。クラスメイトの佐々木律子から呪われた教室の除霊をしてほしいと依頼される。しかし、その霊気は強く、独力ではとても祓えそうにない。そこで彼は守護霊を召喚し、その力で除霊をしようとする。呼び出された守護霊は熾天使のアブデル。高位の天使であるアブデルとともに探り当てた妖気のもとは、桂たまという童顔の少女で、実は彼女は悪魔だった。しかし彼女は自分が妖気をたれながしているという自覚がない。ロリコンのアブデルからたまをまもり、彼女が自分の力を制御できるように特訓しようとした是雄だったが……。
作者はオカルティシズムや宗教史などの知識は豊富であるようだ。設定や、端々にこぼれ出る記述、作者あとがきなどからそれがうかがいしれる。しかし、これがラブコメディとして小説化された時に、その知識をギャグに直結させることができているかというと、それは疑問である。アブデルがロリコンなのは神が美少女の姿をしていてその神への愛が結実したものだというあたり、なかなかいい着想ではないかと思うのだが、実際に使われるギャグがその着想に追いついていないというのが実感である。
活字のギャグは難しい。言葉に対するセンスが研ぎすまされてないといけないからである。作者が今後この路線で作家活動を続けていくのならば、そういったセンスを磨いていってほしいところだ。それよりも、豊富な知識を生かした伝奇小説かファンタジー小説を書いてほしいと思うのだ。デビューしたばかりだからどのように化けるか今後に注目していきたいが、成功の鍵を握るのはその方向性ではないだろうかと感じた次第である。
(2001年2月17日読了)