上方落語界の最長老、笑福亭松之助に林家染丸がインタビューしたもの。入門の経緯、入門当時の上方落語の状況、「宝塚新芸座」の様子、「吉本新喜劇」創立時の動き、古典落語をリフレッシュさせる松之助師匠の工夫、明石家さんま入門のエピソードなど、貴重な証言満載の一冊。
松之助師匠が「吉本新喜劇」の座付作家とは知らなかったが、本書には師匠が書いた台本がまるまる1本分収録されているのも面白い。まさに多芸多才の人なのである。芸に関する知識欲旺盛な染丸師匠が落語家でないとでてこない質問をしてうまく話を引き出している、その聞き上手なところにも感心した。昔懐かしい芸人さんたちの素顔が生き生きと語られているだけでなく、松之助師匠が長年つけているメモを確認しながらのものなので、資料的な価値もある。
落語ファン、そして演芸ファンならぜひ一度読んでみてほしい、楽しい本である。
ただ、このタイトルと版下屋が適当に作ったような装丁はなんとかならんものか。これでは何の本だかわからない人もでてくると思うぞ。
大阪の出版社は総じてセンスがよくないけれど、本書は特に問題が多い。内容がいいだけにもう一工夫ほしかった。
(2001年2月20日読了)