読書感想文


ハイウェイ惑星 惑星調査艇ヒノシオ号の冒険
石原藤夫著
徳間デュアル文庫
2001年2月28日第1刷
定価676円

 惑星開発コンサルタント社の調査員、ヒノとシオダのコンビが太陽系人類の居住や観光に適した惑星を調査するが、そこには不思議なことばかり。ハイウェイが網羅されていて、そこに車輪生物が走る「ハイウェイ惑星」。コンピュータが常に一定の状態を保たせている無人の「安定惑星」。重力遮断怪獣に荒らされる「空洞惑星」。頭が2〜3個もある奇妙な知的生物の住む「バイナリー惑星」。マイクロブラックホールを産出し、星中にブラックホールが存在する「ブラックホール惑星」。ヒノとシオダはこれらの奇妙な星々の秘密を、極めて科学的に調査し、その秘密を解明していく。
 ハードSFの宝玉ともいうべきシリーズの復刊である。奇想天外な現象を、緻密な科学理論で裏付けた短編ばかり。本書は全17編のうち、5編を作者が選び抜いた傑作選。ハードSFとはいえ、ユーモアたっぷりに描かれているので、科学的なことにアレルギーのある人でも楽しく読めるようになっている。
 私がこのシリーズを初めて読んだ時が高校時代。それ以来の再読というものも含まれている。読み直して驚くのは、アイデアが決して古びていないこと。科学の本質的な面白さは時代を超えて不変だということか。小道具などはさすがに現在は作者の想像をこえる発展ぶりなのではあるが、それでも違和感なく読み進められる。
 SFの面白さとはこういったロジカルなところにあるんだよなあと思い起こさせる良質のシリーズ。残りの2冊分も復刊してほしい。特にこのシリーズに初めて接する若い読者のためにも。

(2001年2月25日読了)


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