読書感想文


ちんぴら・ぽるの
藤本義一著
角川文庫
1979年7月30日第1刷
1980年7月30日第4刷
定価340円

 大阪を舞台にした、ちょっと尾籠で可笑しくも哀しい人間模様を描いた短編集。
 有閑マダムの不感症を直すためにマスターベーションしているところをフィルムにおさめさせてくれと依頼されるチンピラやくざの情けない思いを描いた表題作。陰部から物を出し入れする花芸を生業とする女の心意気を描く「花芸人」。浮気をしているらしい男をつかまえ、興信所員のふりをして金をだまし取ろうとするけちな詐欺の顛末「浪花三銃士」。借金の取り立てに来た男に家を占拠されてしまうみじめな中年サラリーマンを主人公にした「ちぐはぐ譚」。警察に一泡吹かせようとするストリップ小屋の支配人の計略を描いた「野坂昭如先生様」ほか全7編。
 猥雑ながら地べたを這いずるようになんとか生きている人間たちの姿は、いささか誇張されアクが強くはあるけれど、なにやら哀れでもあり頼もしくもある。高度経済成長期が終わり、構造不況に陥った時代の先の見えなさが作品世界にもろに出てきている。なんとなく結末がすっきりしない作品もあるけれど、それよりもそこに描かれている男や女の姿に愛着を感じさせる。
 バブルが崩壊し、先行きが見えにくい今だからこそ、たとえ舞台背景が古びていようと、共感を持って読むことができるのではないか。そんな気がする短編集である。残念ながら現在は絶版。

(2001年3月4日読了)


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