著者が「東京中日スポーツ」や「週刊ベースボール」に連載している野球コラムを一冊にまとめたもの。1995年から2000年までの間に書かれたもので、しかも野球時評とでもいうべき内容であるにもかかわらず、その論旨は一貫している。その場しのぎのように書かれたものは一つとしてないのだ。
タイトルは刺激的だが、内容は正論。レギュラー選手のプライドを大切にしてほしいと監督たちに提言し、ひとつの球団のみが財力に任せて有望な選手をかき集め二軍の有望な選手を腐らせていくおろかさ、審判の権威を認めない監督や選手が野球規則違反をしているとの指摘、コミッショナーの権威のなさについての嘆きなど、全てのコラムを通じて「フェアプレイ」の必要性を説く。
「巨人がプロ野球をダメにした」のは、つまりこの「フェアプレイ」の精神が欠如しているからで、そんなプロ野球はみたくないと著者は主張する。それは、あの名作「監督」(文春文庫)の作者ならではの野球論である。
名誉職のようになっているプロ野球のコミッショナーだが、私は一度でいいから著者をコミッショナーにしたら、どれほど球界がよくなるかと想像してしまう。ただもしそうなったら、各チームのオーナー、特にジャイアンツのオーナーは著者をつぶしにかかることだろうな。
著者のスポーツを見る目の確かさを実感させてくれる1冊である。
(2001年3月20日読了)