保険会社を解雇された柚ノ木透子は、アルバイトでバーテンをしていたスナックのママの仲介で秘書の仕事を紹介された。龍緋比古というオカルト著述家のもとで古書の整理などをする透子。しかし、彼女の先輩によると、緋比古は吸血鬼ではないかという噂があるという。おりしも、東京では吸血鬼が出没するという都市伝説が広がっていて、行方不明者も続出していた。緋比古に疑いを持つ透子。緋比古が不在となった屋敷で、透子はメイドのライラが変身した獣に襲われる。一方、緋比古と透子を狙う吸血鬼の集団は、透子が妹のように可愛がっている大学生、翠にその毒牙をのばしていた。緋比古の真の姿とは、そして透子と彼の間に隠された関係とは。吸血鬼集団の真の狙いは……。
吸血鬼の起源をキリストの磔刑と結びつけ、独自の解釈を加えた新しい吸血鬼小説。もっと一気呵成にストーリーを進めてほしいと感じたりはしたものの、吸血鬼が女性を虜にしていくさまなどの書き込みにはなかなか興奮させられた。予想していたほど主人公の緋比古にぞくりとくるような色気はなく、どちらかというと平凡なキャラクターのように思われるが、その普通さ加減と正体とのアンバランスなところも実は魅力的であったりする。
今後シリーズ化されるかどうかは現時点では不明だが、もしそうなったとしたら、そのアンバランスな部分を全面に押し出していけば独特の味が出てくるのではないかと期待される。
（２００１年４月８日読了）
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