古代史や三国志を題材にとった作品が中心の作者が初めて挑む現代もの。
霊の存在が認知され除霊を行う事務所が全国にあるという舞台設定。所長が亡くなった「高原御祓事務所」の後を継いだのは長男の高原透。彼は霊を見ることはできても祓うことはできない。このままだと警察の摘発を受ける恐れがあるとして透は事務所の解散を考えていた。ところがそこへ彼の腹違いの弟だと名乗る矢野真吾が事務所を訪ねてくる。除霊能力を持つ真吾を臨時で雇い入れた事務所だが、除霊依頼が突如殺到。除霊をいかさまとかたくなに考える父親のいる南雲家の除霊に行ったところ、その長男由久は警察官。なぜか彼は高原事務所に強い関心を持つ。真吾は果たして信用できるのか。由久の狙いは。そして高原事務所の運命は……。
設定はユニークで除霊の場面などもなかなか迫力のあるタッチで描かれている。人間関係の綾もきっちりと描かれている。そういう意味では読みやすく肩のこらない作品に仕上がっているといえる。しかし、残念ながらそのレベルにとどまっていて、もうひとつ奥行きが感じられなかった。例えば霊の存在が認知された背景をきっちりと書き込むなどすればいかさま除霊師の存在やかたくなな父親の心情などに説得力が増すなどすればもっとメリハリのきいた作品になったのではないかと思う。タッチが軽妙なのとストーリー自体に質感がないのとは違うのだが、そこらあたり作者はちょっとさじ加減を間違えてしまったかなというように感じられた。ストーリーテラーとしての力量は十分にある作家だけに、もったいないところである。
(2001年5月5日読了)