読書感想文


惜別お笑い人
相羽秋夫著
東方出版
2001年4月10日第1刷
定価1500円

 本書は長く上方の演芸に関わってきた著者が、芸人さんの死にあたって新聞や雑誌に書いてきた追悼文と、古い芸人さんについてその思い出を綴った雑誌連載をまとめたものである。
 特に注目したいのは追悼文で、死の直後に書かれているのでその芸人さんを美化している分は割り引いて読まねばならないけれど、その時代の上方の演芸界の状況がその文章に反映され、いわばリアルタイムで書かれた演芸史といった趣きになっている。
 古い芸人さんについて書かれたものについては、回想という形式をとっている分、その後の演芸界の推移と合わせて書かれているのである程度まとまった芸人列伝という感じになっている。こちらは俗名、没年月日、行年、戒名、宗派が必ず書かれているのが面白い。お寺の情報誌に連載されていたものだからかもしれないが、芸人列伝がお寺の情報誌に連載されていたというところがいかにも大阪というところか。意外に貴重な資料かもしれない。
 芸人さん一人当りに割かれたスペースが少ない分、簡潔にまとまっていて読みやすい。ユニークな構成の異色の芸人列伝である。

(2001年5月13日読了)


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