読書感想文


三人のゴーストハンター 【国枝特殊警備ファイル】
我孫子武丸・牧野修・田中啓文共著
集英社
2001年5月30日第1刷
定価1900円

 4年前、『人喰い屋敷』で起きた惨事。その生き残りの5人が開く〈国枝特殊警備保証〉には、普通の警備員では対処できない怪事件の解決が持ち込まれる。社長の国枝は事件によって3人の警備員に事件を振り分ける。霊を見て祓う力を持つ洞蛙坊、怪現象を人間の生み出した妄念として解決する比嘉薫、そして怪現象を科学的に解明する山県匡彦……。彼らの助手として霊を感じることのできる元アイドルの橘小百合が加わり、様々な事件を解決していく。やがて彼らは4年前に彼らの運命を変えた『人喰い屋敷』に集まる機会を得、奇怪な事件の真相に踏み込む。
 3人の個性の異なる作家による連作シリーズが書き下ろしを加えて一冊にまとまった。同じ設定で作家ごとに主人公を変えて怪事件を解決していくというこの試みはそれぞれの個性が際立っているが故に相乗効果をもたらして大きな効果をあげている。伝奇色が強くグロテスクな味わいと強烈な地口の田中啓文、サイコ・サスペンス色が強く現実と幻想の境界を漂う牧野修、ミステリ色が強く合理的にすすめる我孫子武丸。この組み合わせの妙を楽しみたい。
 そして、最終話はなんと3人の作家が別々のラストを用意している。そう、本書は一冊で3人の作家が競作をしているのだ。これを作家ごとに3冊に分けたりすると、その競作の面白さを味わうことはできない、という実に贅沢な作りの本なのだ。
 「ゴーストハンター」という縛りから作家がより強く自分の個性を強調することができたといえるだろう。これは企画の勝利でもある。むろん、3人の作家に力量がなければこの試みは成功するはずもないのである。

(2001年6月12日読了)


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