東京を突如襲ったM震……それは局地的に激しい地震が起こり、モザイク状に町が破壊されていく不自然な地震だ。無事に残った町の人々がいる一方で、家族を亡くして新しい町に救われる人々もいる。しかし、大輔たち少年グループはそんな町には入らず自分たちの力で生きていこうとしている。食料を手に入れようと武装する町に侵入した大輔たち。しかし、襲撃は失敗してしまう。そんな中で仲間に加わったのは、野球帽を目深にかぶりサングラスをかけたリュウという少年。彼を追って、彼そっくりの少年たちが現れる。さらに、彼を守ろうとする看護婦、唯花の存在もある。M震を引き起こしたと告白するリュウの持つ力とは。そして大輔たちを待ち受ける苛酷なサバイバルとは……。
M震というユニークなアイデアを基盤に、危機的状況に生きる人々の心理を描いた作品。廃虚となった近未来というアイデアはいろいろな作家や漫画家によって描かれてきているわけだが、M震という設定は安穏な生活を送る人々と運よく生き残った人々との対比をはっきりさせるという意味を持つものだろう。ただ、本書はそういったサバイバルだけがテーマではない。自分の持つ能力によって町が破壊されていくという少年の自分の力に対する恐れ、その力を利用しようとする勢力などの要素をからめて、重層的な物語を作り出そうとしている。
本書の場合、こういった設定に対する模範解答というような感じがする。ただ、ここ数作に比べて、かなりかつてのトーンが戻ってきているような気がする。次巻以降で、作者ならでははの陰影に富んだ展開になる事を期待したい。
(2001年6月18日読了)