読書感想文


超・殺人事件 推理作家の苦悩
東野圭吾著
新潮エンターテインメント倶楽部
2001年6月20日第1刷
定価1400円

 出版業界の抱えている問題点をデフォルメし、皮肉たっぷりに描き出した短編集。そのシニカルな笑いのあと、現実に返らされてぞくりとしたりもする。
 突如ベストセラーが出たため税金を大量に支払わなくてはならなくなった作家が必要経費捻出のために取った一手を描く「超税金対策殺人事件」、売れっ子作家の原稿を取りに行く編集者たちの苦悩を描いた「超犯人当て小説殺人事件」、老人性痴呆症の作家の悲哀を描く「超高齢化社会殺人事件」、どんどんと分厚くなる本と大長篇を求められる作家の苦闘を描いた「超長編小説殺人事件」、大量に出版される小説を読み切れず苦しむ書評家に売りこまれた読書マシーンをめぐって起きるゴタゴタを書く「超読書機械殺人事件」ほか、いずれも一読して苦笑せざるを得ない作品ばかり。
 大切なのは、小説という形に仮託して作者の行っている問題提起だろう。出版業界の課題をそのままストレートに書くと生臭くもなるが、笑いのオブラートに包んでいるので深刻さが薄れている。が、ここで提示された問題を笑ってすますわけにはいかない。私は各作品の裏に秘められた作者のいら立ちや怒りを確かに感じたし、書評に関わる部分については自分自身にその課題を突きつけられたように思う。
 まあ、一般の読者はデフォルメされた作家たちの姿を見て素直に笑ってほしい。それが一般の読者にあてた作者の望みだと思う。
 意地の悪い作品ですよね。ミステリの書評家の方たちはどんな書評を書くのかな。

(2001年6月24日読了)


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